土曜日の朝のロイヤルホスト。
1時間以上銅像のようにおなじ体制で,身動きもせずにいるおじいさん。
コーヒーの湯気はとっくに消えている。
考え事をしているのか,していないのか。
おじいさんの視線の先に飛び込みたい衝動に駆られたり,真似しておなじ体制で5分間くらいじっとしてみたり。
新聞を4社分熟読しているおじいさん。
毎日の習慣だとすると,どのくらいの言葉を食べているんだろう。
膨大に食べて消化器官を通った言葉たちは,どこに排出されていくんだろう。
毎週おなじ女性と8時半に待ち合わせをしているというおじいさん。
今日はなかなか女性が現れないようで,店員さんに「いつもの女性」はまだ来ないのか,と尋ねている。
店員さんも,「いつもの女性」とだけでわかっているようで,まだですねと答えながら一緒にお店の外を見たりして。
9時5分,未だ待ち人来ず。
4度目の店員さん呼び出し,なぜ来ないのか,と尋ねている。
どうされたのでしょうね,としか答えようのない店員さん。
9時15分,「いつもの女性」がやっと現れた。50代後半かな。
女性は遅れたことを詫びることもなく,簡単な挨拶だけで,ふたりで黙々とトーストを食べて,食べ終えるとすぐに女性が帰っていった。
若干30歳の私には想像が追い付かない関係。
70代くらいの常連のご夫婦。
ふたりで,とってもゆっくりと,丁寧に,そして美味しそうにパンケーキをフォークとナイフで味わっている。
ドリンクバーのコーヒーは奥さんが取りに行く。
1度に1人分しか運ばないから,1度につき2往復。
店員さんがおかわりお持ちしましょうか?と尋ねても丁重に断り,
自分たちのタイミングでおかわりに立つ。
この老夫婦2人だけの間に流れている穏やかな時間。
平均年齢高めな土曜日の朝のロイヤルホスト。
空想の世界でいろんなお客さんの隣に座って味わう薄めのコーヒーは,穏やかな冬の味。
それぞれの人にとって,きっといつもの週末の朝。
こういった,当たり前に過ごせる週末の朝が,ずっと当たり前のようにやってくることが,いちばんの幸せなのかな。